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英語話者はどうやって文法を身につけるのか?
科学的に正しい英語学習法をゲーム感覚のアクティビティに落としこむと使える英語が身につきます。人見知りさん、口下手さんでも大丈夫!
面白い質問が届きました。以下質問文を転載します。
質問ですが「a」と「the」はネイティブの子ども達はどのように理解してきたのでしょうか?
I went to the pool.
It was a hot day. (Kipper’s diaryより)日本人であれば文法書などでその違いを学んだりしますが、ネイティブは感覚や経験から習得していくのでしょうか?“
ネイティブがどのように冠詞を身につけるのか?という質問ですが、答えは、ご自身でも書いていらっしゃるとおりです。ネイティブの子ども達は豊富な実体験から習得しています。
子どもは、どの国でもそうですが、生まれてからじっと周囲の会話を聞き、状況からあたりをつけて発言の意味を理解するようになります。そして、2年くらいたったら、周りで話されている会話を真似をし始めます。そうやって使う中で言葉を覚えていきます。もし、間違った使い方をしていたら、周囲にいる人が指摘してくれるので、そのなかで修正をかけていき、最終的に正しい言葉を覚えていくのです。
a と the が使い分けられる不思議
おそらくご質問者さんが疑問に思われたのは、自分のような大人でも難しい冠詞の使い分けを、どうして子どもができるのか?とういことなのでしょう。
それは、英語と日本語とでは意識を置いている場所が違うからです。子どもは置かれた環境で、生きていくのに必要な文法知識から身につけていきます。
例えば、英語ネイティブの子どもは2語文(日本語で言えば、「ワンワン来た」「○○ちゃん、食べる」など)を話すときには、すでに「語順」の意識をもって話すことがわかっています。つまり、英語では語順意識が一番大事ってことです!日本人は語順意識がないので、これが英語が通じない一番の理由になっています。
話を冠詞にもどします。
英語とは「一つに決まる」のか「不特定多数の中の1つさす」のかを意識する言語です。ネイティブの子どもは、そこが大事だと気づいたら、そこを意識して使うようになります。(日本語には冠詞がないので、日本人にとって冠詞は非常に難しいし、身につきにくきのです。)
ご質問いただいた文章
・I went to the pool.
・It was a hot day. (Kipper’s diaryより)
the pool と the がついているのは、不特定の任意のプールではなく、Kipper がいつもいく近所のあのプールと一つに決まっていて、そのプールを思い浮かべながら書いているので、theが使われています。
逆に a hot day の場合、ごく一般的な意味での暑い日なので、限定性のない 「a 」 が使われています。もしこれが、互いに共通理解のある「ほら、あの事件がおこったあの暑い日のことだよ」という状況であれば the hot day になるというわけです。
言葉とは、このように自分で推測し、トライ&エラーの中獲得していくのが一番自然です。ただ、デメリットは膨大な時間がかかるということ。
この 質問者さんが読んでいる Oxford Reading Treeはイギリスの小学校の8割で教科書として使われているので、英語ネイティブの子どもも、この本を読むことでそれまで無意識だったa と the の使い分けをはっきり認識できるようになるのかもしれません。このように、ネイティブの子ども達も、周囲で話されている言葉に加え、学校で国語としての英語を学んでいくわけです。母語話者になるには本当に長い年月がかかります。
外国人である私たちは、英語を道具として使えるレベルに効率よく引き上げるために文法を学んでいます。習得に長期間かかるというデメリットを軽減する助けになるからです。(その意味では、重箱の隅をつつくような細かい文法は、会話にはあまり必要ないのです!)
文法書で概要を手っ取り早く知れるのは大きなメリットです。ただ、そこには落とし穴もあります。
① 冠詞のように日本語にその概念がないものは、日本語でいくら説明されても理解しづらい ― 特に英語初心者で、英語のインプットがない人には理解が難しい。結果、暗記になりがち。
② 文法書こそが正しいと思い込んでしまい、人が本来もっているはずの言語習得能力を使わなくなってしまう。教えてもらわなければ身につかないと錯覚しがち。
③「文法をマスターすれば英語が話せるようになる!」「英語ができないのは、文法知識や単語力がないため」という「勘違い」が横行する。
文法をマスターしたら英語が話せる、という勘違い
英語を話すために文法こそ大事だと主張する人がいます。
学校英語でも文法学習が英語学習の中心でした。ですが、「知識として知っている文法は使える」というのは”幻想”です。実際には使えない場合がほとんどです。
私たち日本人はみな「が」や「は」などの助詞を間違えることなく使えますよね。
ですが、その使い分けを説明できますか?
説明できない人がほとんどだと思います。つまり、日本語を自在に使いこなしている日本語の母語話者であっても、なぜそうなるのか理由を説明できない場合が多いんです。これは、説明できるような知識になっていないからです。(こんな知識のことを第二言語習得論では「暗示的知識」といいます。)
子どものころから何度もインプットして状況とともに理解する経験の中で、自然に、無意識的に身についているのです。
英語の母語話者も、彼らが学校で学んだ文法以外は英語の文法は説明できないでしょう。(ネイティブだからと言って英語が教えられるわけではないというのはこんなところに理由があります。)言葉の習得には、そんな ”言葉で説明できない知識、体で体得した知識” が必要なのです。
そして、このような、文法的には説明できないけど、「この時にはこの表現」「こんな時には絶対こんな言い方しない」というのが無意識でわかるようになって、はじめて言葉は自在に扱えるようになるのです。
そして、そんな無意識の能力を身につけるには、大量のインプットが必須です。
※話がずれますが、学習初期には便利な英和辞典にも同じようなデメリットがあります。
英単語に1つの日本語といった覚え方をすると、”単語と日本語とは1対1対応する” かのような間違った認識を持ちがちです。が、特に基本単語ほど、核となるイメージから派生してさまざまな意味をもつものです。それをすべて和訳して覚えると数が膨大になり、ワケがわからなくなってしまいますよね。ですから、基本的な単語で書かれた絵本、ネイティブの子どもが英語を身に着けるために書かれた絵本で、基本単語の核となるイメージを体得することが英語習得の早道なのです。
多読をススメる訳
学生時代に身につけてしまった「英語=暗記」だという思い込みをはずし、文法書や辞書の呪縛から抜けるには、自分の中の言語習得能力を信じつつ、たくさんの基本的な英文に触れることが大切です。
具体的には、文法は、中学レベルでOK。
基本文法で概要をつかんだら、あとは、たくさんの本を読み、たくさんの事例に出会い、基本的な単語や文法がどう使われているのかを自分の感覚として経験し、基本単語の核となるイメージを英語のまま体得する作業を地道に行う。
それはまさに、ネイティブの子どもの生活を追体験するようなもの。
自分の実年齢・知的年齢とはそぐわない作業ですが、そのプロセスで本当の英語力が身についていきます。
英語習得の世界にも自分の中にもう一人の自分がいます。英語を頑張ろうと思ってはりきっていた英語年齢0歳だった自分は、いきなり中学生の勉強をさせられてパニックになってしまいました。英語年齢0歳から小学生までを追体験させてやると、学校での学びと統合されて、本当の力が発揮できるようになります。英語の世界のインナーチャイルドを多聴多読で癒してあげましょう。
おまけーおススメの文法書
お手持ちの日本語の文法書では、解説が不十分なものが多いです。わかりづらい場合は、以下をおススメします。
「一億人の英文法」
大西泰斗/ポール・マクベイ著
(東進ブックス)
「Basic Grammar in Use」
Raymond Murphy 著
(Cambridge University Press)
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